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ファッションデザイナーが思う「化繊とサステナビリティ」の話

こんにちは、久保です。

ファッションデザイナーが思う『サステナビリティ』の話」の続編として、今回は、ポリエステルやナイロンといったいわゆる化繊(化学繊維)について思うところを語ってみたいと思います。

ご存知の通り、私たちの身の回りの多くの場面で、ポリエステルやポリプロピレンといったプラスチック素材が活用されています。そして、今でこそレジ袋は「プラスチックごみを減らすため」という目標に向けて有料化されていますが、そうなる前後には、「クジラやカメなどの海洋動物が投棄されたレジ袋をエサと間違えて食べてしまう」とか「超微細になったプラスチックが海に流れ込み、魚などの体に蓄積されるなどの海洋汚染につながっている」といった話題が連日取り上げられ、プラスチックごみは非常に問題になっていたものです。

そんな話が出てきたのもきっかけになってか、衣類に用いるポリエステルやナイロンもなんだか否定的に捉えられる傾向が高まったように感じます。

一方で、個人的には、化繊の中でもポリエステルについて、印象に残っているエピソードがあります。 まだファッションデザイナーになる前、今から30年くらい前のこと。とあるTV番組で、出始めのフリースが特集されていたのですが、その中で「この洋服の繊維、ペットボトルから作られているんですよ!」と、紹介されていたんです。それを見て、単純に「すごい!」と思ったのを今でも覚えています。

以来、実のところ僕自身は、服作りの素材としてポリエステルやナイロンといった化繊は優れている部分が多いと感じ、結構使っています。色褪せず、伸縮性があって型崩れせず、耐久性も高いため、「へこたれずに長く着てもらえると考えられるから」というのがその理由です。 その“証拠”にお見せしたいのが、以下の写真です。 この「NYLON PANTS」は22年春夏に販売・完売したものなのですが、僕自身も1年ほぼ毎日履き続け、ほぼ毎日洗濯して乾燥機にもかけた一本です。写真で見ると分かりづらいかもしれませんが、膝のアタリもなく、裾のスレもなく、状態がいいままです。丈夫すぎる。

サステナブルなファッションという文脈で支持されることが多いコットンですが、一方で、上の写真のように長年着回していると、劣化はどうしても避けられません。デニムのように経年劣化が味になるのならいいのですが、そうではない洋服の場合、もしかするとポリエステルやナイロンのような化繊の素材でできたものの方がキレイな状態を保ち、「捨てちゃおうかな」という気持ちが湧くことなく長く着続けてもらえるのではないか? そっちの方が結果的にサステナビリティを実現できるのではないか? そんな気もしています。

少なくとも、「コットンは自然由来の繊維だからいい、ポリエステルやナイロンのような化繊は世の中から排除されるべき」と決めつけてしまう前に、「本当にそうなのかな? 実際に見極めてみたいな」というのが今の僕の感覚です。

ただ、やっぱりデザインの好みや「飽き」といった問題で買い換えたくなるのも人情です。僕たちファッションデザイナーは、そういう気持ちが起こらないように、しっかりと考え尽くして丁寧に作り上げた唯一無二とも言える一着を提案して、簡単に“消費”されることなくずっと長く愛着をもって着続けてもらえるような提案をする、という気概が大事なのでしょう。

そうしてファッションに関わるひとのサステナビリティの実現に貢献しつつ、「もう一着、ちょっと違ったものを選ぶならどれがいいか?」という時に選んでもらえるようにするのが僕たちの腕の見せどころだと考えています。

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